2017年4月9日日曜日

技術はトライ&エラーで覚える やり直しがきくからこそ自由になれるデジタルイラスト

日本の学校教育について時々言われること

それは、「失敗が許されない」ということだ。
どんな風に教えてみても、根底にそれがあるから結局最短距離で正答を求めるようになる。

個人的なことだけど、家の親はいつまでたっても小学生の頃のテストの間違いを笑い話のつもりで話す。こっちが嫌がっているにも関わらず。
レイチェル・カーソンの沈黙の春を題材にしたテストの時だった。
どうして彼女がその道に進もうと思ったのかを文章から読み取って答えるというものだった。
文章には、豪雨を窓から眺めていたら森の木が一本雷に撃たれて、それを見てハッとした…ようなそんな文章が書かれていたから私もそういう風に書いた。
正しい答えはさっぱり覚えていないのだけど、それは不正解。
それをことあるごとに馬鹿にしたように笑うのだから、失敗はバカにされるものという思考が根底にあるのだろう。
ちなみに、同じ回答をした子供はほかにも数人いた。一クラス20人ぐらいの学校だったので、かなりの割合じゃないか。

そしてそれは美術も変わらない。
教師は自由だというのかもしれない。
でも、違う。
発想はいくらでも自由でも、扱う画材が一度間違ったらやり直しが困難なものばかりだ。
水彩絵の具で塗ったものを後から直すのはなかなか難しいし、版画なんてもってのほか。
時間があれば直せるかもしれないが、今や美術の時間は削減されとにかく時間がない。
それでどうして自由なのだろう。

デジタルなお絵かきソフトの可能性

そこで思いつくのは、お絵描きソフトの存在だ。
デジタルであればやり直しも簡単だ。ボタン一つでもとに戻せる。
やり直しがきく、というだけでだいぶ向き合う心持も変わってくる。
そうすると、こうしてみたらどうなるかな?とかいろいろ発想も出てくる。
失敗したらやり直せばいい。
その事実一つあるだけでいいのだ。

ただ、タブレットを全員に持たせることにいろいろ議論があるように、お絵かきソフトを全員に持たせることはそれ以上に大変だろう。
以前、京都でDSの絵心教室を導入した学校があったようだが、京都といえば任天堂があるから協力を得られる。
そういう土壌がなければ、なかなか難しい。
また、コンピューター上で絵を描こうとするとアナログと勝手が違うから慣れが必要になる。
最近はタッチパネルが増えたから差は少なくなったものの、やっぱり慣れるには少し時間が必要だ。

それから、アナログで描くのとデジタルのお絵描きソフトでは書き味が違ってくる。

一枚目がclip studio paint(以下クリスタ)で描いたもの。
二枚目が絵心教室で描いたもの。
比べるために同じ手順で描いた。
絵心教室はアナログの書き味を再現しようとしているから、筆跡がかなり残る。
それに対してクリスタで描いたものは、ヌルっとした感じだ。
アナログで描けばまた違うものになるだろう。
デジタルのお絵かきソフトには、水彩風ブラシとか油彩風ブラシとかついているが、風であって完全に再現されたものではない。
お絵描きソフトはお絵描きソフトという画材の一つなのだ。
もしも、学校で扱うことがあるのならそこを留意しておかなければならないと思う。
あれば、の話だけど。

電子機器が絵を描くことを身近にする

全ての子供がそうであるかはわからないが、昔に比べたら絵を描いて誰かに見せる行為が容易になったように思う。
それはデジタルで描いたものだけじゃない。
スマホのカメラで、紙とペンで描いたイラストを撮影してSNSに載せる。
雑誌に投稿して載せてもらうとか、自分でHTMLを打ち込んでサイトを作って…なんて時代に比べたらはるかに容易い。
それにゲームに限っても、DSの動くメモ帳でパラパラ漫画を描いて見せたり、ミーバースにイラストを載せてみたり…いろいろできる。

スマホのお絵描きアプリも充実している。
タッチパネルは直感的だし、マウスと違って感覚のずれも少ない。
マウスで描いていたときと比べたらはるかにアナログの感覚に近く、そしてそれは簡単になったということだ。

大学生の頃、ゲームと美術教育なんて題材で論文を書いて発表したのだけど、教育学部にあったからなのか何なのか、ゲームに対してどこか否定的な人な学生もいた。
まあ、美術よりゲームにハマったらどうするのとか、ゲームをやってない子が仲間はずれにされるとかそういうことだったのだけど。
でも、そのゲームの中で子供たちが絵を描いて、何かを作っているのだとしたら?
遊びの中で楽しんで何かを描き、何かを作り、そして誰かに見せているのだというのなら、その方がいい。

授業だと身構えてしまうけど、遊びの中なら失敗してもまた挑戦する気になれる。
ハマっているというのは、そういうものだ。
そうやって、技術を覚えていく。
それって、きっと成長するということだ。
失敗する自由がなければ、成長する実感はない。
実感があるから、楽しい。

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